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> 飲み込むことの大切さ
 明日(27日)発売の月刊宝島4月号で『中国「一党独裁廃止」ネット署名運動の深刻度』を書きました。機会ありましたらご一読ください。
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 今回はぼくがともすれば陥りがちなことへの自戒を書きます。
 標題の飲み込むことがいつ何時でも必要であるかと問われると、そのようには思いません。たとえば、今ぼくはわりと08憲章関係の原稿を書いていますが、政治的に敏感な話題でも知ったことは隠さずに書いていくことが時には大切かもしれません。
 ここで言う飲み込むことは、対人関係に伴う精神衛生の話です。たとえば身近にいるある人間に対してなんらかの不満を持ったとします。時にそれを本人に語ることは大切ですが、語りつくせないほど不満がたくさんあるかもしれませんし、ちょっと口に出せない場合もあるかもしれません。
 その際に肝要なことは、ともすればそれを自分の心の中であれこれとめぐらした挙句、「自分はかくかくしかじかだから相手が悪いのだ」などと自分の正当性を確認しがちですが、あまりこれをやりすぎないことです。そうではなく、不満のもやもやを心中に残しつつ生きていく必要があります。心中の不満もやもやの全く存在しない状態では、自分があまりにも正しくなりすぎて行動ができなくなり、さらには他者を捨て去ることにもなります。なぜならあまりにも完全すぎる批判は現実から乖離しがちだからです。心の中での他者への批判はほどほどでやめる必要があります。少なくともその批判の正当性に則って他者を捨て去るのは慎重にならなければなりません。自分が正しいと思えば思うほど、今の自分を疑うべきなのです。
 考えてもみれば、最も多感かつ知的好奇心も最も旺盛な高校・大学時代において、ぼくたちはずいぶんと級友といさかいや対立をしました。その原因は些細な場合もあれば、ぼく相手にはあまりなかったのですが取っ組み合いの場合もあったし、これが最も多いですが全人格や家族を否定する話であることもあります。なにしろ、若い盛りの人が全力で相手を攻撃するのですから相当なものです。とはいえ、翌日にはまた席を並べ、ただし心の中にはいくばくかの不満を抱えたままです。そんな状態に慣れながら日々を過ごしたのが学校時代だったのではないでしょうか。今も親しくする高校・大学時代の友人は何人もいますが、すでに関係が薄れたかつての友人も含めて、喧嘩の数だけ友達もいたと言えます。
 しかし、歳を取るにつれて、もやもやを抱えながら生きることを忘れがちになります。ぼくは中国でやはり喧嘩の数だけ友達ができたと言えるので、必ずしもそうではないかもしれませんが、それでも日々の中でついつい他者批判という精神衛生法で自己を完全に正当化してしまい、他者を捨て去ってしまうことをしがちです。また、中には喧嘩をしながら友人を作る体験がなかった人もいるはずです。特に若い人は、わりと敏感で、あることがきっかけで二度と口をきかないことが多いかもしれません。もちろんそのすべてを避ける必要はありませんが、友情が他者と他者のつながりである以上、衝突なくして起こることはありえず、そのすべてを避けてきたのだとしたらそれは大切なものを失うかもしれません。たとえば、一昔前の日中比較文化の本はしばしば、ある人がある人を批判し、それに対して相手が「ありがとう」というような付き合い方を中国人がする、などと書いたりしていますが、そういった倫理があることは確かにせよ、現実にはその逆で、どこの国であろうが衝突が起きなければ正しい批判だとも言えないのです。だから、喧嘩慣れしていなければ、批判されることで関係が切れたり、さらに言えば、批判はするけれども、その批判に対して相手が怒ったり、無視した場合に、それで一切が終わってしまうのです。そうではなく、それに相手がキレたり無視したとしたら、その反発的な行動もまた不愉快ではあるが当たり前、として放置しておくことがうまくできない人が最近は多いのではないか、そしてぼくもそうなりつつあるのではないか、そのように自戒するのです。
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by gikyoudai | 2009-02-26 14:56 | お知らせ | Comments(6)
Commented by yasuhara at 2009-02-26 21:44 x
こんにちは。今回の記事はいつにも増してずしんと響きました。
「相手がキレたり無視したとしたら、その反発的な行動もまた不愉快ではあるが当たり前、として放置しておくことがうまくできない」との文言、本当に耳が痛いものです。これまでに何人かの人と疎遠になった理由は、まさに私が正論を振りかざして批判した相手からの反発を、自分が受け入れられなかったからでした。自分の言っていることが正しいと思うほど、相手からの反発に自分が傷つけられるように思ったのでした。いま思えば、余裕が必要だったのでしょうが、そういうときに限って余裕がなくなってしまうのです(それが正論というものの怖さかもしれませんが)。
Commented by gikyoudai at 2009-02-27 01:02
>yasuhara さん
ごぶさたしております。お忙しいと思いますが、お元気ですか。
今回書いたのは自戒で、当然ながらぼく自身が耳が痛いものです。
ただこれまで著書などを批判されると、その批判が当たっている場合も当たっていないと思われる場合もぼくは例外なく怒るのですが、そんな怒るぼくを見捨てなかった人たちを思い浮かべます。ぼくなどはまだまだだと思い、自戒を込めて書いた次第です。
後半の心理、とてもよくわかります。正しければ正しいほど、、時には善意の自覚があればあるほど、反発されることに対する失望や怒りも出てくるものですよね。そうそうNさんとも学生時代は喧嘩ばかりだったんですよ。
Commented by ひらの at 2009-02-27 12:53 x
先日は、ありがとうございました。
自戒・・・全く、今、その渦中にいていらいらすることばかりだったので
随分と脳の奥まで響きました。
私の場合、その他者をさりげなく無視しつつあります。
難しいですね。
年長者に言われました。
『自分がそう思っている時は、相手も同じことを思っている』と。
同じく、耳の痛い話です。
Commented by gikyoudai at 2009-02-28 13:01
>ひらのさん
さりげなく無視していくことも時には大切ですよね。もちろん今回書いたことも何もかも飲み込むこととは違います。無視する場合としない場合の境界とは、たとえばどういう自分として生きていきたいかが決めることなのかな、と思ったりもします。
こちらこそ先日はありがとうございました。
Commented by ダニ坊 at 2009-03-27 14:56 x
未成年の頃相手を攻撃する場合、(私は女子なので一応取っ組み合いはなかったものの)越えてはいけない線を越えてまでの言葉で攻撃、態度、ありました。大人気ない。
が、大人になってからの攻撃の方が更に酷く思えます。陰湿だからでしょうか。大人としてできない攻撃方法が不満を大きくさせて、陰湿な攻撃をさせているのか、大人のほうが大人気ないというか。

ここ数ヶ月、とてもツライ日々を送りました。
どうして自分を理解しない!?何か悪いことでもしたかよ!なんだその態度は!それでも人間か!最低なヤツらめ!
髪が突然白くなり、抜け、肌がボロボロ、不眠、などなど。
ひどいストレスでした。


が、数週間ほど前から、周りが変わってきました。
ワタシを受け入れるようになってきました。

自分が面倒で逃げ回っていたことを、あえてするようになった頃からです。
人の嫌がることを率先してするようにしているこのごろ。

すると、自分がするようにしているそれを、していない人間に腹がたってきました。
その時、周りから見た私はきっとこうだったんだ、と気づきました。

自分を正当化するばかりじゃ、、、ですよね。
Commented by gikyoudai at 2009-03-27 19:33
>ダニ坊さん
言葉で人を傷つけたことは数え切れないほどあります。
大人になってからの方が陰湿というのはわかる気がします。なによりぼくにそういうところがあるのではないかと反省しなければなりません。

それにしてもダニ坊さんはずいぶんと辛い日々を送ったのですね。今、そのことが解決したと知り、とてもよかったと思います。後段の文章で展開されているような辛くても前向きなその姿に敬服いたします。

読むことと旅することと生きること、そして書くこと
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