地下鉄南北線六本木一丁目駅と日比谷線・大江戸線六本木駅とは徒歩にして15分ほど離れており、ぼくがたまに作業に使う知人の事務所は六本木一丁目駅の付近にある。
六本木といえば人混みが連想されるが、それは六本木駅の話で六本木一丁目は趣きが異なる。壮大な駅ビルにブティックやレストランが並び派手派手しいものの、クリスマス客が多そうでぶらつきたくない今日ですらここはいたって静か。かと言ってさびれているのでもなく、地上に出ると巨大ビル・巨大マンションが並び、全体が一つのショーウィンドーであるかの感覚を催すのは台場や幕張、あるいは秋葉原の一部地域を連想するかもしれない。そこに体をさらすのはけっして嫌ではない。
真夜中に誰も乗せないメリーゴーランドがきらびやかな灯りに照らされつつ回転するような無機質さ。そこに居心地のよさをおぼえるのはきっとぼくの中身が沙漠のごとく無味乾燥としていて比重が合うためであろう。そして、視野を大陸に向けると、大陸で起きている新しい人間の営みもその少なからずがこうした香りなき香りの土地から芽生えつつある。大陸で新しい生活スタイルに触れてその印象を日本と比べる場合には六本木一丁目みたいな場所も頭にとどめておかねばなるまい。
というわけで無人の部屋で一人、キーボードを叩いている。