広東省公安当局は七月十五日、東莞市で五件の児童誘拐事件を摘発したと発表した。無事保護された児童は百人以上に上った。中国新聞社が伝えた。
事件を報じた中国新聞社によれば、中国の国境地帯では、こうした児童誘拐事件や売春など人身売買問題が深刻化していて、公安当局も厳重な取り締まりを実施しているが、根本的な解決には至っていないという。
五件の事件で百人が保護されたという点からも明らかなように、今回報じられた誘拐事件はいわゆる人身売買を目的としたものであって、身代金目的ではない。けれども、摘発された場所が外資系企業がことさら多い東莞市という点が気になる。
実は中国ではずいぶん前から人身売買が横行していて、それは農村の嫁だったり、養子だったり、あるいは乞食ビジネスの担い手などとして売り飛ばされるようだが、広東省の都市ではことのほかこうした事件が多発している。以前は香港向けに売られていたが、最近は国内でも市場が形成されているようだ。
農村の嫁を売るなどというのはいったいいくら儲かるのか、最近の相場をよくは知らないのだが、買い手が農民で大金持ちであれば嫁など買う必要もないわけだから、きっとたいした額ではないのだろう。そうなると、いずれ誘拐ビジネスの犯罪グループは身代金目的の誘拐に切り替えてくるのではないか、などと思えてしまう。
身代金目的の誘拐は中国大陸ではあまり聞かないが、中国の経営者がメディアの取材を嫌う理由の一つに、住所などが特定されて子供が誘拐されるのを恐れることもある。中国人の新興経営者たちはガードの固い人が多いが、誘拐で狙われるのはけっして国内企業家にとどまらないだろう。外国人の駐在員なども当然、対象になる。要は身代金が払えそうな人たちならば誰でもいいのだから。
一般に中国は外国人にとって治安のいい国だと言われ、泥棒などが多発することはあっても、外国人をターゲットにした強盗やましてや殺人などはあまり起きていないが、日本での中国人犯罪グループの起こす事件などを考えてみても、今後は外国人を狙った犯罪が多発しないとも限らない。安全対策が必要であると言えよう。(2004年7月)