赤坂、東新宿などで飲みの機会があり、新入社員当時の話題が出た。話を聞くに、日本の職場の様子はぼくが新人だった十数年前も今もあまり変わっていないようである。
新入社員やこれから入社する人たちによく話すのは、初めの頃に形成された人間関係を変えていくことの難しさだ。人間関係というのは上司と仲がいいとか悪いとかでなく、「あいつは◎◎な人だ」といったふうに形成される自分の社内での位置を指す。初めの頃、様子をうかがうつもりで自分の嗜好や希望などを押し殺し、時機を見てから自分を出していこう、と考えている人で、実際に時機が来た時に自分を出した人、というのは少ないと思うが、それもまたいったんできた人間関係の座標軸を作り変えることの難しさにもあるのだろう。
最近学校時代の友人のホームページを見ていたら、彼などは新入社員時、自らの歓迎会において上司たちの前で割り勘を要求したそうで、その考え方の是非はともかく、そのようなことを早いうちから言い出せることは、確固たる自分を持つ点だけでなく、実は表裏一体の関係にあるが会社に語りかけている点にもっと注目してもいいのかもしれない。
「うちの会社は自分の思い通りに仕事をさせてくれない」と言う人にも2種類あり、いくら話しても受け入れてくれないケースもあれば、端からあきらめている場合もあり、後者について言えばそもそも会社に語りかけてはいない。だとしたら会社がどうして考えてくれようものか。
もちろん、自分を出していくことのバランスやタイミングはあるのだろうが、初めは環境を見定めることにばかり情熱を注ぎ、見定めた時点で自分を出していこう、などと考えても、見定めた頃にはすでに自分をも見定められた状態で見定めざるを得ない。
以上の話は会社だけでなく、フリーの世界でもあてはまることかもしれない。そもそも個に生きる、ということはフリーであるかどうかとは必ずしも関係しないと思う。会社にいても個に生きる人はいるし、その逆もあるのだと思う。