久しぶりにテレビをみる。センバツに45年ぶりに出場した慶応高校の初戦。相手の関西高校はさすが西日本の強豪で能力の高い打者が多かった。試合は7対7の9回、慶応高校が満塁から
スクイズのつもりで送り出した代打がサイン見落としのポテンヒットを放ち、サヨナラ勝ち。頭に打球を受けるアクシデントがありながらも完投したエースの気迫の粘投が光った試合だった。
それにしても、決勝打の場面でスクイズのサインが出ていた、というのは興味深かった。代打・走者ともサインを見落としていたらしい。それほどまでに打つ気迫が、そして打ってもらい生還する気迫が強かった、というふうにとらえたい。そして、開口一番、「選手をほめてやりたい」と言った監督がよかった。こうしたプレー(気合が入りすぎてのサイン見落とし)を叱らない、大局を重んじる監督、というものが高校野球では必要ではないか。原理原則を重んじるあまり杓子定規にサインミスをたしなめる監督が多いのではないかと考えるにつけそう思った。
サインミスはよくないが、流れによっては目をつむることも大切で、また、ナメられたなどと考えない泰然さも必要だろう。エンジョイ野球というキャッチフレーズを掲げているが、それはワイワイ楽しくやることと言うよりは、今を気迫もて乗り切る瞬間瞬間にほかならず、そのことが伝わってくる試合だった。そして、その伸び伸びさに、祖父から聞いた大正の高校野球を思わせたのが慶応高校だった。