ある比較的若い日本人が日本の元軍人の高齢者たちの聞き取り取材を進めていて、いずれ日本のどこかの出版社から本にするらしい。どんな内容だったかははっきり憶えていないが戦争加担への反省のコメントが多くヒューマニズムに訴えたものだとは記憶している。そして、以下の経緯からそのヒューマニズムには疑問を抱かざるを得ない。
このレポートは、いずれ中国で書籍化する話が持ち上がりながら、作者はどういうわけか曖昧な対応を繰り返したまま、結局それをうやむやにしてしまった。おそらく内容が多少反日的で、中国に利用されることを不安視したのだろうが、だとしたら日本で書籍化することにも再考の余地があろう。もし不安であれば、不安であることを中国に堂々と述べた上で「先に日本で出したい」とか「日本の出版社との関係がある」とか、あるいは「取材相手に迷惑がかかる」などとはっきり言うのが筋であろうし、日本語で出されても中国の人は注目するだろう。そして、中国で取り上げられることが不安な内容を日本で広めることには、このケースではなんら意義を見出せない。
結局、戦争も日本人同士でわかりあえばよい、という閉塞感漂う発想が根底にあるとしか思えず、このような本が出ることで、それが反中的であろうが反日的であろうが相手が介在しない日本人の日本人に対する罪をあおる意識(もしくはそのアンチ)が増幅されることになるとしたら不幸なことではあろう。かりにいずれぼくがこの本を読み、この本をおもしろいと感じたならば、ぼくはぼくがおもしろいと思ったぼくの認識を疑おうと考えている。
註・・・この書き込みで問題にしているのは特定の個人である作者というよりも、けっして作者1人にとどまらないと思われる、ある思考の傾向、であり、また、今後作者が以上で述べたようなことに変更を加えるのであれば、ぼくは以上の認識を180度改めなければならないだろう。