ダカーポ今号の反日特集を読む。全体として中国での反日というものが日本で多くのメディアから取り上げられたほど深刻なものでなく、意識過剰を避けるべきだとの方針で作られたものだと言え、今の言論空間において意義のある特集だと思った。但し、その前提となるべき現状認識において中国側の考えを伝える人材が老上海人だけでは心もとない。今回の連載でも書いたが、今の中国における「反日」はけっして九十年代までのそれとは違うもので、官製と民間の対立という既存の公式にあてはめ過ぎるのでは、現実とは食い違ってしまう。ましてや上海というのは中国において例外そのものだから余計にそうなってしまっている。続く宮崎正弘氏の「中国のナショナリズムは官製」の原稿も現実の中国を知っての意見とは言いがたい(中国には滅私奉公はないという奇説も登場するが、ぼくは中国には滅私奉公しかないとすら思っている)。ただしそうしたいくつかの違和感はあるものの(相原さんの中国語についても同様)、教科書に関しての丁寧な取材や外務省関係者Aのコメントなど興味深い記事も多く、全体としてものすごく良心的な方針で作られていて、興味深い内容だと言えた。
歯医者などの用事を済ませつつ短い原稿を考える。中国の経済成長、特にその象徴とも言うべきベンチャー企業家たちの心情が日本では伝えられておらず、経済成長の捉えられ方がぼく的に違和感を持つものなので、そのスケッチを試みたいと考え、題材を整理する。『風の王国』はしばらく読んだが、中断することに決定する。