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> 原理原則・状況認識とは別視点での朝青龍問題への視点
 朝青龍の巡業不参加・サッカー試合出場を契機とした騒動についていろんな意見が出ているが、おおかたは以下の3つに分類される。
(1)朝青龍と高砂親方、あるいは相撲協会(朝青龍の品格、親方や協会の指導不足など)を非難する。
(2)(1)とほぼ同じ枠組みだが、朝青龍を擁護する(外国人力士、これまでの功績、協会のありかたへの非難など)。
(3)朝青龍の「病気」を重視した上での意見(モンゴル帰国が望ましい、協会の対応の是非など)
 このうち(1)(2)は原理原則論、(3)は状況認識論と言えよう。原理原則とは「横綱とはかくあるべき」「親方とはかくあるべき」「協会(相撲)とはかくあるべき」の原理原則を考察したものであり、(1)と(2)はその原理原則にのっとって朝青龍を非難するか擁護するかの差にほかならない。
 他方で(3)は朝青龍の状況(病気の真偽、病気の知識)を原理原則よりも優先させた発想で、病気が本当であるかどうかと見ることで結論は180度異なる。
 
 ところでぼく、あるいは「ぼく的な発想」といってもいいが、ぼくは朝青龍の一連の問題を(1)(2)(3)のように見ることがあまりない。ぼくがこの問題に関して思うのは
「朝青龍がこのまま引退した場合、朝青龍は史上最強の横綱としていつまでも銘記されるだろう」という一点にしかない。
 昭和以降の横綱で、無敵の時代を築き、なおかつ衰えも見られないまま引退した横綱というのは1人もいなかった(大正以前だと栃木山がこれに該当する)。病死など不慮の出来事で引退を余儀なくされた横綱としては玉錦、前田山、鏡里、玉の海、双羽黒などが挙げられるが、玉錦を除くと無敵の時代を築いた横綱とは言いがたく、玉錦にしても、すでに双葉山に覇権を奪われた後での死亡だった。そもそも無敵の時代を築いた横綱というのは少なく、今かりに常の花、双葉山、栃錦、若乃花、大鵬、北の湖、千代の富士、貴乃花がそうだとすると、彼らはみな相撲生活の晩年を経験しており、弱くなって引退をしている。
 ところが朝青龍が今引退したとしたら、無敵の時代を築き、なおかつ最終場所も白鵬にまだまだ負けぬ第一人者ぶりを顕示したまま引退することになり、「無敵の時代を築き、なおかつ衰えも見られないまま引退した横綱」ということになる。
 となると、今後相撲界はどうなるかと言えば、かりに白鵬が来場所以降無敵の時代を築いても、琴光喜や琴欧州や稀勢ノ里が横綱になっても、所詮は「朝青龍がいなかったからにすぎない」との認識が始終ついて回るようになる。昭和のはじめ、すでに現役を引退して5年が経った春日野親方(栃木山)がトーナメント戦で現役力士を打ち負かして優勝したことがあったが、やがて春秋園事件へと向かうあの頃と同じぐらい相撲が不人気になっていってもおかしくはない。
 相撲は文化であり、格式であるが、なによりも「誰が強いか」をたのしむ競技であり、強くない者が強い相撲など人気が出るはずもない。

 今回の協会理事の反応や外部のバッシングの背後にはこれまでの朝青龍のやり方に対する反発があったことは間違いないが、以上の発想から言えば、本当に朝青龍の鼻をあかしたいのだとしたら今回のようなやり方でなく、朝青龍より強いと明らかにわかる力士が登場し、朝青龍が二番手以下になることが明白になる流れが必須だということなのだ。そうではなく今回のような流れで引退させるのだとしたら、朝青龍の鼻をあかすのに力士の台頭をのぞむことができず、巡業部長などの肩書きによる強権発動で動かしたことになり、それは相撲界に相撲の論理とは別の力(強い弱いの価値でなく協会の上か下かであるような力)が入り込んでいることにすぎず、相撲人気はますます落ちることになるとぼくは思っている。となると相撲協会も朝青龍を超える力士を台頭させるべく尽力すべきで、今回の件では何はともあれ朝青龍の復帰を果たさねばなるまい、いいか悪いかなどという話ではなく、得策であるかどうかということである。
 もちろん、強いことが重視される相撲界でも強くあれば何だって許されるわけではない。それはそうだが、だとしたら今回の朝青龍の行動が強さと品格の矛盾を突きつけるほどの一大事であったのかとぼくは問いかけたい。
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by gikyoudai | 2007-08-14 14:14 | コラム

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