(食事日記)
9日・・・昼食13時半:辣豆腐・炒餅(玉田県、外)、夕食16時半:地元蒸し鶏料理(玉田県、外)、おやつ19時:とうもろこし(玉田県、家)、夜食21時:地元魚料理(玉田県、外)、玉田県泊
10日・・・朝食6時半:豆醤・油条(玉田県、家)、昼食10時半:餃子(玉田県、外)、夕食20時:麻婆豆腐(甘家口、外)、夜飲23時:コーヒー(草場地、家)、草場地泊
この2日間は今回の目的地の1つ、河北省玉田県散水頭鎮にある青庄塢、十里★(★=土+它)という2つの村を訪問しました。ともに村長の汚職が公然と行われていて(十里★では元書記)、村人の多く(村民によれば半数以上)が反発して、10年以上も前から鎮や玉田県や隣りの唐山市、河北省政府に直訴しているのですが、「調査する」との返事ばかりでいっこうに解決されません。4年前からは十数人の村人が定期的に北京(中央紀律検査委員会)を訪れて直訴活動を続けていますが、やはり埒があきません。彼らが北京で途方に暮れていた頃に偶然通りかかったのが彼らとの出会いの始まりでした。
以前法律専門の週刊新聞が彼らを取材したことがあったのですが、この記者は取材内容を村長に売ってしまったそうで、村長は国家からの農民への補助金の不払い、黒社会を用いての恐喝などあらゆる手を使って反対派を抑え込んでいます。
最近、中国の地方での暴動がよく取り上げられているようですが、もっと起きていても不思議でないぐらい地方では地元政府の不条理なやり方に村民が反発を強めるケースを見聞きします。村民は言います。「彼ら(政府)は能力でここを支配しているんじゃない。勢力で支配するだけだ」と。中国に触れれば触れるほど、この言葉が身に染みて感じられるのはぼくだけでしょうか。ただただ地方、それも農村で生まれ、中国でつい最近まで長らく公然と存在し続けた(事実上は今も存在)都市農村隔離政策で農民と運命付けられ、しかも村長一派からも虐げられる身であること。そして、明らかに不条理である今の境遇を取り上げ、解決してくれる道がどこにもないこと。彼らは口々に言います。「この世の中は黒い」と。
中国に行ったことのない人はわかりづらいかもしれませんが、テレビドラマ「水戸黄門」で悪代官がのさばる村を想像して頂けたらいいかと思います。唯一の違いは水戸のご老公があちらにはいないことです。
しかし、それでも彼らはあくまで抗議活動を続けます。これほど出口のない状態でありつつ、なおかつ短気を起こさず長期的な闘いを挑む姿勢にぼくは勇気さえ与えられます。その際、彼らは「偉大な社会主義、偉大な毛沢東」との言葉を口にします。彼らが口にする社会主義や毛沢東はぼくが日ごろ冷めたまなざしを向けるそれらとはあまりにも異なるものです。そして、彼らが夢見る「社会主義的な正義」の先に、ぼくは北京や東京で慣れ親しむものとの共通点を見出したりさえするのです。村民と義兄弟の契りを交わしたゆえ、この件は今後しつこく書いていくとします。